ペット業界の転職支援サービスが公表した統計によると、動物関連職種の1年以内離職率は約28%。特に未経験入社の場合、その数字は35%まで上がるそうです。私がSOPRAの湘南辻堂店にドッグトレーナーとして入社したのは、ちょうど3年前の春でした。それまで犬の仕事に就いたことはなく、正直「自分にできるのか」という不安しかありませんでした。
今、この記事を書いているのは、担当犬7頭を抱えながら、週に2回は後輩の実技指導もしている3年目の私です。辞めずに続けてこられたのは、運が良かったわけでも、特別な才能があったわけでもありません。SOPRAの育成の仕組みと、現場で支えてくれた先輩たちのおかげです。
1年目:「わからないことだらけ」から始まった基礎習得期
入社して最初の半年間は、トレーニング実技よりも「観察」の時間が圧倒的に多かったです。久保田シニアトレーナーの担当クラスに同席して、どんなタイミングで褒めているのか、どの瞬間に介入しているのかをひたすらメモしました。
最初の壁:犬の「サイン」が読めない
一番苦労したのは、犬の行動の兆候を見逃してしまうことでした。吠える直前の耳の動き、興奮が高まる前の呼吸の変化。今では当たり前に気づけることも、当時の私には全く見えていませんでした。
久保田さんに「今、あの子どんな気持ちだと思う?」と何度も聞かれました。最初は答えられなくて、悔しくて帰りの電車で泣いたこともあります。でも、その「なぜ?」を繰り返してもらったことで、少しずつ犬の視点で考えられるようになっていきました。
座学と実技のバランス
SOPRAの研修は、週に1回の座学と、毎日の実技指導が基本です。座学では行動学の基礎や、犬種ごとの特性、トレーニング理論を学びます。
- 陽性強化法の基本原則と実践方法
- 問題行動の原因分析と対処法
- 飼い主さんへの説明の仕方とコミュニケーション技術
- 安全管理とリスクマネジメント
正直、最初は座学の内容と現場の状況が結びつきませんでした。「理論ではこう言っているけど、目の前のこの子にはどう応用すればいいんだろう?」という疑問だらけ。その都度、先輩に質問して、一つひとつ解消していく日々でした。
1年目の現実
最初の3ヶ月は犬に触れる時間よりも掃除や準備の時間のほうが長かったです。「こんなはずじゃなかった」と思ったこともあります。でも、その地道な準備作業が、犬の環境づくりの大切さを体で覚える時間だったと、今ならわかります。
2年目:担当犬を持つことで見えてきた「責任」の重さ
入社から1年3ヶ月が経った頃、初めて自分の担当犬を任されました。パピークラスに通う生後5ヶ月のボーダーコリー、ルナちゃんです。飼い主さんは共働きのご夫婦で、「噛み癖と興奮のコントロールができるようになってほしい」という希望でした。
プレッシャーと向き合う日々
担当を持つということは、その子の成長に直接責任を持つということです。週に2回のレッスンで、飼い主さんに「今週はこういう練習をしてください」と宿題を出す。次のレッスンで成果が出なかったら、それは私の指導が悪かったということです。
ルナちゃんの興奮のコントロールがなかなか進まず、飼い主さんから「本当に良くなるんでしょうか?」と不安そうに聞かれたときは、正直焦りました。すぐに久保田さんに相談して、トレーニングプランを一から見直しました。
「犬は嘘をつかないから。うまくいかないときは、必ず何か理由がある。飼い主さんの生活環境、犬の体調、レッスンのタイミング、全部見直してみて」
久保田さんのこの言葉が、今でも私の基準です。結局、ルナちゃんの場合は家での運動量が足りていなかったことが原因でした。飼い主さんに散歩の時間と内容を見直してもらったところ、3週間で劇的に落ち着きが出てきました。
飼い主さんとの信頼関係
2年目に気づいたのは、ドッグトレーナーの仕事は「犬を訓練する」ことだけではないということです。飼い主さんの生活スタイルや価値観を理解して、その家族に合ったトレーニング方法を提案する。そして、飼い主さん自身が犬と向き合えるようにサポートする。
ルナちゃんの飼い主さんは、半年後に「他の犬にも優しく接するようになって、散歩が楽しくなりました」とメッセージをくださいました。そのメッセージを読んだとき、初めて「この仕事を続けてきて良かった」と心から思いました。
3年目:後輩指導で改めて気づいた「基礎」の大切さ
今年の4月から、新人トレーナーの実技指導を任されています。週に2回、入社半年の後輩と一緒にレッスンに入って、フィードバックをする役割です。
教えることで学び直す
後輩に「なぜこのタイミングで褒めるんですか?」と聞かれたとき、改めて自分の判断基準を言語化する必要がありました。無意識にやっていたことを、理由と共に説明する。これが想像以上に難しかったです。
でも、この経験のおかげで、自分のトレーニング技術がより明確になりました。「なんとなく」でやっていた部分が「根拠を持った判断」に変わっていく感覚がありました。
専門性を深める方向性
3年目になると、自分が得意な分野や興味のある分野が見えてきます。私の場合は、子犬の社会化トレーニングと、多頭飼育のご家庭のサポートに力を入れています。
SOPRAでは、シニアトレーナーがそれぞれ専門分野を持っています。鵜澤さんは問題行動のリハビリ、寺原さんはアジリティやドッグスポーツ。私もいつか、自分の専門分野で認められるトレーナーになりたいと思っています。
正直に言うと、今でも難しいと感じること
担当犬が7頭になると、一人ひとりの進捗管理が大変です。飼い主さんへの連絡、レッスンプランの調整、記録の更新。事務作業の時間も確保しないといけません。先週は残業が10時間ほどになってしまいました。効率化の工夫は、まだまだ課題です。
未経験から始めて、本当に続けていけるのか
この3年間を振り返って、未経験からでもドッグトレーナーになれるかと聞かれたら、私は「なれる」と答えます。ただし、条件があります。
必要なのは「犬が好き」だけではない
犬が好きなのは大前提です。でも、それだけでは続きません。必要なのは以下のような姿勢だと感じています。
- 観察を続ける忍耐力 — 犬の小さな変化に気づくまで、何度も見続ける
- わからないことを素直に聞ける謙虚さ — プライドで質問を我慢しない
- 飼い主さんの立場で考える想像力 — 専門用語を押しつけず、寄り添う
- 失敗から学ぶ柔軟性 — うまくいかなかったとき、原因を分析できる
私自身、1年目は失敗だらけでした。リードの持ち方一つとっても、最初は犬に引っ張られて転びそうになったこともあります。でも、その都度、先輩が「次はこうしてみたら?」と具体的なアドバイスをくれました。
SOPRAの育成環境で感じたこと
正直、他の職場と比較したことがないので、SOPRAの環境が「業界標準」なのか「特別」なのかは判断できません。ただ、私が感じているのは、SOPRAのドッグトレーナー育成体制は「一人で悩ませない」構造になっているということです。
月に1回、全店舗のトレーナーが集まる勉強会があります。そこで困っている事例を共有すると、他店舗のシニアトレーナーからアドバイスがもらえます。銀座本店の寺原さんからもらった「興奮しやすい犬への接し方」のアドバイスは、今でも現場で使っています。
これから応募を考えている方へ
この記事を読んでくださっている方の中には、「未経験だけど、本当に大丈夫だろうか」と不安を感じている方もいると思います。私もそうでした。入社前は犬の散歩代行のアルバイトをしていただけで、トレーニングの知識はゼロでした。
でも、3年経った今、私は毎日担当犬たちの成長を見守りながら、この仕事を続けています。もちろん、大変な日もあります。先週は担当犬のラブラドールが急に体調を崩して、飼い主さんと一緒に動物病院に付き添いました。レッスンの予定が全部ずれて、夜遅くまで調整作業をしました。
それでも、翌週そのラブラドールが元気にレッスンに来てくれたとき、飼い主さんが「あのとき一緒にいてくれて、本当にありがとうございました」と言ってくれました。こういう瞬間があるから、続けていけるんだと思います。
もし、この記事を読んで「自分もやってみたい」と少しでも思ったなら、まずはエントリーフォームから話を聞きに来てください。実際の店舗を見て、シニアトレーナーの話を聞いて、それから決めても遅くありません。私も入社前に湘南辻堂店を見学して、久保田さんの実際のレッスンを見せてもらったことが、最後の決め手になりました。
19年間、SOPRAは現場の声に支えられて成長してきました。次の一人が、あなたかもしれません。私が後輩として、あなたと一緒に働ける日を楽しみにしています。
