「トリミングは店舗で完結する仕事」と思われている方が多いかもしれません。でも、それは半分だけ正解です。SOPRAでは創業当初から出張トリミング・出張トレーニングサービスを展開していて、私も週の半分は出張担当として首都圏のお客様宅を訪問しています。
出張サービスと聞くと「店舗より楽そう」「自由に動けそう」というイメージがあるかもしれませんが、実際はむしろ逆。店舗勤務とはまったく違う難しさと、だからこその面白さがあります。今日は、出張担当として3年働いてきた私の視点から、この仕事のリアルをお伝えします。
朝9時、出張トリミングの1日が始まる
私の出張日は、朝9時に会社の専用車両に機材を積み込むところから始まります。トリミングテーブル、ドライヤー、シャンプー各種、タオル30枚、バリカン、ハサミセット……店舗なら当たり前にあるものを、すべて車に詰め込みます。
この積み込み作業、最初は30分以上かかっていました。今は15分。何をどの順番で積めば、訪問先で効率よく取り出せるか。3年かけて体に染み込んだ手順があります。
午前中の1件目は世田谷区のマンション。13歳のトイプードル、ルナちゃんの全身カットです。エレベーターで機材を運び、玄関先で靴を脱ぎ、リビングの一角をお借りして作業スペースを確保します。
出張先で必ず確認すること
- 電源の位置(ドライヤー用に15A以上確保できるか)
- 水場の場所(シャンプー後の排水処理)
- 作業スペースの床材(滑り止めマットが必要か)
- 他のペットの有無(猫ちゃんがいる場合は別室待機をお願いすることも)
ルナちゃんの飼い主さんは70代のご夫婦。ルナちゃんは後ろ足が少し弱っていて、車移動がストレスになるため出張サービスをご利用いただいています。「いつもの場所で、いつもの匂いに囲まれて」トリミングできることが、シニア犬にとってどれだけ負担軽減になるか。この仕事を始めて初めて知りました。
「お邪魔している」感覚を忘れない
店舗勤務と出張勤務の最大の違い。それは、自分が「ホーム」ではなく「アウェイ」にいるということです。
店舗なら、多少シャンプーが飛び散っても、毛が散らばっても、すぐに掃除できます。でもお客様の自宅では、そうはいきません。作業前にビニールシートを敷き、作業後は掃除機とコロコロで徹底的に毛を取り除きます。ソファの隙間、カーテンの裾まで。
先日、先輩の久保田シニアトレーナーにこう言われました。「出張は技術力だけじゃ成り立たない。お客様の生活空間を一時的に借りているっていう謙虚さがないと、クレームにつながる」
実際、私も1年目に失敗したことがあります。トリミング後の片付けで、お客様の大切にしていた観葉植物の鉢を動かしてしまったんです。元に戻したつもりでしたが、位置が5cmずれていた。それだけで、お客様は気づきます。自分の家だから。
それ以来、作業前にスマホで作業エリア全体を撮影するようにしています。片付け後、写真を見ながら元通りになっているか確認する。地味ですが、この習慣でクレームはゼロになりました。
音、匂い、時間への配慮
マンションでの出張サービスでは、近隣への配慮も欠かせません。
- ドライヤーの音:午前9時前、夜8時以降は避ける
- 犬の鳴き声:慣れない場所で興奮する子もいるため、事前に落ち着かせる時間を取る
- 匂い:シャンプーの香りが廊下に漏れないよう、換気のタイミングを調整
店舗なら気にしなくていいことを、出張では常に意識しなければなりません。正直、最初の半年は「店舗の方が楽だな」と思っていました。
出張だからこそ見える、犬と飼い主さんの本当の関係
でも、1年を過ぎた頃から、この仕事の面白さが分かってきました。
お客様の自宅に入ると、その家族と犬の関係がすべて見えます。リビングのどこに犬のベッドがあるか。食器はどこに置いてあるか。散歩グッズの収納の仕方。写真の飾り方。
店舗では、お客様は「お客様モード」でいらっしゃいます。でも自宅では、普段着の、素の関係が見える。それが、トリミングやトレーニングの質を大きく変えるんです。
ある日の訪問トレーニングで気づいたこと
先月、出張トレーニングで訪問したお宅でのこと。1歳半の柴犬、コタロウくんの「吠え癖」改善がテーマでした。飼い主さんは「インターホンが鳴ると吠えて困る」とおっしゃっていました。
でも実際に自宅を訪問してみると、インターホンの近くにコタロウくんのケージがあったんです。つまり、誰かが来るたびに「自分の縄張りに侵入者が来た!」と反応せざるを得ない配置になっていた。
ケージの位置を変え、インターホンが鳴る前におやつで気を引く練習を飼い主さんと一緒に実践。3週間後には吠える回数が半分以下になりました。これは、自宅を訪問したからこそ気づけた改善点です。
店舗でのカウンセリングでは、こういう「環境要因」まで見抜くのは難しい。出張だからこそ、犬の問題行動の根本原因に辿り着けることがあります。
移動時間は、次の訪問の準備時間
午後2時、2件目の訪問先へ移動します。この移動時間が、実は重要な準備時間。
車内で次のお客様のカルテを確認します。前回のトリミング内容、飼い主さんからの要望、犬の性格メモ。出張は1対1の時間が長いぶん、店舗以上に「覚えてもらっている感」が大切なんです。
「前回、柴犬カットをご希望でしたね」「先月、お散歩中に他の犬に吠えられて怖がっていたとおっしゃっていましたが、その後どうですか?」こういう一言が、お客様との信頼関係を深めます。
出張サービスの大変なところ
移動中の事故リスク、天候による予定変更、お客様宅での予期せぬトラブル(急な体調不良、機材の不具合など)への即応力が求められます。店舗のように「先輩に相談」がすぐにできない孤独感もあります。私も最初の頃は、訪問先で犬が暴れたとき、一人でパニックになったことがありました。
夕方5時、最後の訪問を終えて
3件目の訪問を終え、会社に戻るのは夕方6時頃。車内の機材を洗浄・消毒し、翌日の準備をして退勤します。
1日の移動距離は平均40km。訪問件数は3〜4件。店舗勤務なら5〜6頭担当できる時間で、出張だと3〜4頭。効率だけを考えれば、店舗の方がいいかもしれません。
でも、出張には「その子の人生に深く関わる」感覚があります。
ルナちゃんの飼い主さんは、トリミングが終わるといつも「ありがとう。また来月もよろしくね」と言ってくださいます。その「また来月も」という言葉に、継続的な信頼関係を感じます。店舗だと、次回は別のトリマーが担当することもある。でも出張は、基本的に同じスタッフが継続して担当します。
出張サービスに向いている人、向いていない人
3年間この仕事を続けてきて、出張に向いている人の特徴が見えてきました。
向いている人:
- 一人で考えて動くのが得意な人
- お客様とのコミュニケーションが好きな人
- 環境の変化を楽しめる人
- 細かい気配りができる人
向いていない人:
- 常に誰かと一緒にいたい人
- ルーティンワークが好きな人
- 即座の相談相手が欲しい人
どちらが良い悪いではなく、働き方の好みの問題です。SOPRAでは、トリマー募集要項でも記載している通り、店舗勤務と出張勤務、どちらも選べる環境があります。私自身、入社当初は店舗専任でしたが、2年目から「出張もやってみたい」と希望を出して、今の働き方になりました。
これから応募を考えている方へ
出張サービスは、トリミング技術だけでなく、コミュニケーション力、臨機応変な対応力、そして何より「お客様の生活に寄り添う姿勢」が求められる仕事です。
大変なことも多いです。雨の日の移動、重い機材の運搬、お客様宅での予期せぬトラブル。でも、「この人に任せたい」と言ってもらえたときの充実感は、店舗勤務では味わえないものがあります。
SOPRAでは2026年秋に向けて、出張サービス担当スタッフも積極採用中です。店舗勤務からスタートして、希望があれば出張も担当できる。そういう柔軟な働き方ができるのが、SOPRAの特徴だと思います。
この記事を読んで「ちょっと面白そう」と思った方は、店舗見学だけでも歓迎です。私が銀座本店をご案内しますし、出張サービスの車両や機材も実際に見ていただけます。エントリーフォームから、気軽にご連絡ください。お待ちしています。
