私が担当する撮影、月に平均120頭ほどです。銀座本店でトリマーとして働きながら、併設する写真スタジオで撮影も担当しています。SNSで「可愛い!」とたくさんのいいねをもらえる写真も、実は裏側で犬の状態を細かくチェックしているんです。
トリミング直後の犬たちは、人間でいえば美容室帰りのような爽快感と、長時間の施術による疲労が混在している状態。この微妙なタイミングで撮影をするには、犬の表情や仕草から「今、撮っていいか」を瞬時に判断する技術が求められます。
トリミング後、犬はどんな状態なのか
まず知っておいてほしいのは、どんなにベテラントリマーが施術しても、犬にとってトリミングは少なからずストレスがかかる行為だということ。シャンプー、ドライヤー、カット、爪切り。人間にとっては快適なケアでも、犬からすれば「じっとしていなければならない時間」が続くわけです。
銀座本店のシニアトレーナー、寺原さんがよく言うのは「疲れている犬は、耳と尻尾で教えてくれる」という言葉。私も撮影前には必ず以下の項目をチェックしています:
- 耳の位置が普段より下がっていないか
- 尻尾の振り方に元気があるか
- ハァハァという呼吸が激しくないか
- 目線がこちらを向くか、それとも避けているか
- 足取りがしっかりしているか
特に高齢犬や体力のない小型犬の場合、トリミング後にぐったりしてしまうこともあります。先週も、14歳のトイプードルちゃんが施術後にかなり疲れた様子だったので、撮影は翌日のお迎え時にずらしました。飼い主さんには「今日は頑張りすぎちゃったので、明日元気な顔で撮りましょう」とお伝えしたんです。
撮影を見送る判断基準
呼吸が15分以上落ち着かない/目を合わせようとしない/立ち上がるのを嫌がる、これらの兆候が見られたら、無理に撮影はしません。犬の体調が第一優先です。
ストレスをかけない撮影、3つの工夫
スタジオ環境を「リラックス空間」にする
SOPRAの写真スタジオは、いわゆる「白い背景に強いライト」のような業務的な空間ではありません。自然光に近い照明を使い、床には滑り止めマットを敷いて、犬が緊張しないよう配慮しています。
撮影前には必ずスタジオ内を自由に歩かせて、においを嗅がせたり、周囲を確認させたりする時間を取ります。この「慣らし時間」が5分あるかないかで、犬の表情はまったく変わるんです。
「待て」を使わず、自然な瞬間を狙う
よくある失敗が、「じっとして!」「待て!」と指示を連発してしまうこと。指示が増えれば増えるほど、犬は「また何か我慢しなきゃいけないのか」と緊張してしまいます。
私が心がけているのは、犬が自然に見せてくれる仕草を待つこと。首を傾げる瞬間、こちらを見上げる瞬間、リボンを気にして足で触ろうとする瞬間。そういう「犬らしさ」が出る一瞬を逃さないように、シャッターチャンスを狙います。
もちろん、ある程度ポーズを整える必要はあるので、SOPRAのドッグトレーナーから教わった「アイコンタクトの取り方」や「おやつを使わない誘導法」を活用しています。トレーナーとトリマーが同じ職場にいるって、こういうときにすごく助かるんですよね。
撮影時間は最長でも10分
どんなに元気そうに見えても、撮影時間は10分以内と決めています。「もうちょっといい表情が撮れるかも」と欲を出して長引かせると、犬の集中力が切れて、結局いい写真は撮れません。
10分で20〜30枚撮影して、その中からベストショットを選ぶ。これが犬にも、スタッフにも、飼い主さんにも負担が少ないやり方だと実感しています。
写真が、飼い主さんとの信頼をつくる瞬間
撮影した写真は、LINEで飼い主さんに送ったり、店内に飾ったり、インスタグラムに投稿したりしています。でも、写真の本当の価値って「映える」ことだけじゃないと思うんです。
ある日、常連のミニチュアダックスちゃんの飼い主さんが、こんなことを言ってくださいました。「この子、家だとなかなかカメラ目線くれないんです。でもソプラさんで撮ってもらう写真、いつもすごくいい顔してる」って。
それは、犬がリラックスしている証拠なんです。トリミングという少し緊張する時間を終えて、それでもまだ「ここは安心できる場所」と感じてくれているから、自然な表情が出る。その瞬間を写真に残せることが、私たちスタッフの誇りでもあります。
飼い主さんにとっても、「うちの子、こんな表情するんだ」という新しい発見になることが多いです。写真を通じて、犬の魅力を再確認してもらえる。それが、信頼関係を深める一つのきっかけになっていると感じます。
写真データの扱い
SOPRAでは、撮影した写真をすべて飼い主さんに無料でお渡ししています。「この写真、年賀状に使いました」「SNSのアイコンにしました」と報告をもらうたび、やってよかったなと思います。
インスタ映えより大切にしていること
正直に言うと、「インスタ映え」を意識しすぎると、本質を見失うことがあります。背景を華やかにしたり、小物を使ったり。それ自体は悪いことではないけれど、犬が不快に感じていたら意味がない。
たとえば、クリスマスシーズンにサンタ帽を被せた写真を撮りたいという飼い主さんのリクエストがありました。でも、その子は帽子を被せた瞬間にすごく嫌がって、耳を伏せて固まってしまったんです。
そこで私は「帽子なしで、サンタ柄の背景だけで撮りませんか?」と提案しました。結果、犬は自然な表情で、ちゃんと季節感のある写真が撮れた。飼い主さんも「無理させなくてよかった」と安心してくれました。
映える写真を撮ることより、犬が心地よく過ごせることの方がずっと大事。これはSOPRAの全スタッフが共有している考え方だと思います。
撮影技術は、トリマーの観察力で磨かれる
写真撮影の技術って、実はトリマーとしての経験がすごく活きるんです。毎日何十頭もの犬と接していると、「この子は今、リラックスしているな」「ちょっと緊張しているな」が、体の力の入り方や呼吸のリズムで分かるようになります。
カメラの操作や構図も大事ですが、それ以上に「この子の一番いい瞬間はいつか」を見極める観察力が必要。それは、トリミング中に培われる感覚そのものなんです。
もちろん、最初から完璧にできたわけではありません。入社1年目の頃は、撮影がうまくいかなくて何度も落ち込みました。でも、先輩たちに「焦らなくていいよ、犬のペースに合わせて」とアドバイスをもらいながら、少しずつ自分なりのやり方を見つけてきました。
よくある質問
撮影は追加料金がかかりますか?
いいえ、SOPRAではトリミングコースに写真撮影が含まれています。撮影したデータもすべて無料でお渡ししているので、追加料金は一切かかりません。
撮影が苦手な犬でも大丈夫ですか?
はい。カメラが苦手な子、人見知りな子、たくさんいます。その場合は無理に撮影せず、トリミング後の自然な様子をスマホで撮るなど、柔軟に対応しています。犬の気持ちを最優先にしています。
飼い主さんも一緒に撮影できますか?
もちろんです!むしろ、飼い主さんがいた方がリラックスする子も多いので、ぜひご一緒にどうぞ。記念写真として残される方も多いですよ。
犬への配慮が、仕事の誇りになる
写真撮影という仕事は、一見華やかに見えるかもしれません。でも実際は、犬の小さなサインを読み取り、無理をさせず、それでもベストな一枚を残すという、地道で繊細な作業の連続です。
それでも続けられるのは、飼い主さんの「ありがとう」と、撮影後に尻尾を振ってくれる犬たちの姿があるから。犬にストレスをかけない撮影を心がけていると、犬の方も「この人は怖くない」と分かってくれるんです。その信頼関係が、何よりのやりがいになっています。
もしあなたが、ただトリミング技術を磨くだけでなく、犬との関わり方そのものを深めたいと考えているなら、SOPRAのトリマー募集をチェックしてみてください。写真撮影という業務を通じて、犬への配慮と観察力がさらに磨かれる環境がここにはあります。
19年間、SOPRAは現場の声に支えられて成長してきました。次の一人が、あなたかもしれません。
