先週の金曜日、銀座本店の幼稚園ルームで、生後5ヶ月のトイプードル・ココアちゃんが初めて「おすわり」に成功しました。私がハンドシグナルを出すと、少し首を傾げて、それから腰をゆっくりと下ろす。たった2秒の出来事でしたが、見守っていた飼い主さんの目には涙が浮かんでいました。
「先生、うちの子、できました……」
その声が震えていたのを、今でもはっきりと覚えています。技術職としてのトリマーを3年経験してSOPRAに転職した私は、この瞬間に「教育という仕事の報酬は、技術とはまったく違うものなんだ」と実感しました。
入園初日、ココアちゃんは何もできなかった
ココアちゃんが幼稚園に通い始めたのは2ヶ月前。初日の様子は、正直に言って「これは時間がかかるかもしれない」と感じるものでした。他の子犬が遊んでいても隅で固まったまま動かず、名前を呼んでも反応がない。飼い主さんも「うちの子、ちゃんと育つでしょうか」と不安そうでした。
銀座本店で幼稚園を担当する寺原シニアトレーナーに相談したとき、こう言われました。
「焦らなくていいよ。この子には、この子のペースがある。私たちの仕事は、そのペースを見つけて、ほんの少しだけ背中を押してあげること」
その言葉を胸に、私はココアちゃんとの向き合い方を変えました。
小さな成功を積み重ねる日々
最初の1週間は、ただ同じ空間にいることから始めました。私が床に座って本を読んでいると、ココアちゃんが少しずつ近づいてくる。2週目には、私の膝の上で眠るようになりました。
3週目に入って、初めて名前を呼んだときに振り向いてくれた。そのとき使ったトリーツ(ご褒美のおやつ)は、飼い主さんと相談して選んだココアちゃんの大好物でした。小さな一歩でしたが、私の心は躍りました。
- 1ヶ月目:他の子犬と同じ空間で過ごせるようになる
- 5週目:トリーツを手から食べてくれる
- 6週目:「おいで」の声に反応する
- 7週目:アイコンタクトが取れるようになる
そして8週目、あの「おすわり」が成功したのです。
飼い主さんとの二人三脚が、子犬を変える
幼稚園の先生の仕事は、子犬と向き合うだけではありません。むしろ、飼い主さんとのコミュニケーションこそが核心だと、2年目の今は理解しています。
ココアちゃんの飼い主さんは、毎週お迎えのときに必ず10分ほど時間を取って、私の話を聞いてくださいました。その日にできたこと、まだ難しいこと、家でも試してほしい練習方法。私が伝えたことを、飼い主さんはメモに取って、次の週には「先生、家でもやってみたんです」と報告してくれる。
飼い主さんとの信頼関係構築で大切にしていること
- その日の子犬の様子を具体的に伝える(「元気でした」ではなく「今日は初めて○○ちゃんと一緒におもちゃで遊べました」)
- できなかったことも正直に共有する
- 家でできる練習を、飼い主さんの生活スタイルに合わせて提案する
- 小さな成長も見逃さず、一緒に喜ぶ
「先生のおかげです」と言われたとき
ココアちゃんが「おすわり」に成功した日、飼い主さんは「先生のおかげです」と何度も言ってくださいました。でも、私は違うと思っています。ココアちゃんが変わったのは、飼い主さんが家でも根気強く向き合ってくれたからです。
「いえ、○○さん(飼い主さんの名前)が家でも毎日練習してくださったからですよ。私は、そのお手伝いをしただけです」
そう答えると、飼い主さんは少し照れくさそうに笑って、こう言いました。
「でも、どう向き合えばいいか分からなかったとき、先生が道を示してくれたから。それがなかったら、私たち親子、ここまで来られませんでした」
この言葉が、私にとっての一番の報酬でした。
技術とは違う、教育という仕事の難しさ
もちろん、すべてが順調というわけではありません。前職のトリマー時代は、技術を磨けば結果が見えやすい世界でした。カットが上手くなれば、仕上がりが美しくなる。それが目に見える達成感でした。
でも教育は違います。同じ方法でも、子犬によって反応が全く異なる。今週できたことが、来週にはできなくなっていることもある。飼い主さんの期待に応えられず、自分の力不足を痛感する日も少なくありません。
落ち込んだ日に教わったこと
入社して半年くらい経った頃、なかなか進歩が見られない子犬を担当していて、ひどく落ち込んだことがあります。「私、この仕事向いてないのかも」と思いながら更衣室で着替えていたら、寺原トレーナーが声をかけてくれました。
「教育の成果は、すぐには見えないことが多いんだよ。でも、あなたが今その子と過ごしている時間は、半年後、1年後に必ず芽を出す。それを信じられるかどうかが、教育者としての分かれ道かもしれないね」
その言葉を聞いて、少し楽になりました。すぐに結果が出なくても、焦らなくていいんだ、と。
子犬の成長は、自分自身の成長でもある
ココアちゃんの「おすわり」成功から3週間が経ちました。今では「待て」も「おいで」もできるようになり、他の子犬たちとも楽しそうに遊んでいます。あの初日の、隅で固まっていた姿が嘘のようです。
でも、私自身も変わりました。子犬一頭一頭の個性を見る目が養われたこと。飼い主さんの不安に寄り添う言葉の選び方が少しずつ身についてきたこと。そして何より、「すぐに結果が出なくても、焦らず向き合う」という姿勢が、自分の中に根付いてきたことです。
犬の幼稚園の先生という仕事は、技術職とは違う報酬があります。それは、子犬が成長する瞬間に立ち会えること。飼い主さんと喜びを分かち合えること。そして、自分自身も一緒に成長できることです。
もうひとつの’できた!’の瞬間
実は先日、また印象的な出来事がありました。入園して1ヶ月の柴犬・ハルくんが、初めて私の名前を聞いて尻尾を振ってくれたんです。それまでは警戒心が強くて、私が近づくだけで後ずさりしていたハルくん。
些細なことかもしれませんが、その尻尾の動きを見たとき、「ああ、ハルくんは私を信頼してくれ始めたんだ」と感じました。トリマー時代には味わえなかった、心が通じ合う瞬間です。
幼稚園の先生の1日(銀座本店の例)
9:30 出勤、園児たちのお迎え準備
10:00 登園開始、健康チェック
10:30 朝のプレイタイム
11:00 個別トレーニング(1頭20〜30分)
12:30 昼休憩、記録作成
13:30 午後のトレーニングとソーシャライゼーション
15:00 お迎え、飼い主さんへのフィードバック
17:00 清掃、翌日の準備
18:00 退勤
※残業はほとんどありません。月平均5時間程度です。
大変な日もあるけれど
正直に言うと、すべての日が感動的というわけではありません。思うように進歩が見られず、飼い主さんから厳しい言葉をいただく日もあります。子犬同士のトラブルに対応しなければならない日も。
それでも、この仕事を選んで良かったと思えるのは、やはり’できた!’の瞬間があるからです。子犬の目がキラキラと輝いて、「僕(私)、できたよ!」と言っているような表情。飼い主さんが安堵と喜びで涙を流す姿。
技術職としてのトリマーも素晴らしい仕事です。でも、教育者としての喜びは、また別の次元にあると感じます。それは、命と向き合い、心と心を繋ぐ仕事だからだと思います。
これから幼稚園の先生を目指す方へ
もしあなたが、技術だけでなく「育てる」ということに関心があるなら。子犬の成長を見守りたいと思うなら。飼い主さんと一緒に喜びを分かち合いたいと思うなら。
犬の幼稚園の先生という選択肢を、ぜひ考えてみてください。
SOPRAでは、未経験からでも幼稚園の先生を目指せる研修制度があります。私自身、トリマー出身で教育の経験はゼロでしたが、寺原トレーナーをはじめとする先輩方が丁寧に教えてくれました。実際に働くスタッフの声も参考にしてみてください。
この仕事は、すぐに結果が出るものではありません。でも、子犬と飼い主さんの人生に、確かな影響を与えられる仕事です。5年後、10年後、「あのとき先生に出会えて良かった」と思ってもらえる。それが、この仕事の醍醐味だと、2年目の私は実感しています。
あなたは、5年後どんな教育者になっていたいですか?その答えがSOPRAにあるかは、まず話してみて確かめてください。エントリーフォームから、気軽に店舗見学の予約も可能です。銀座本店でお会いできる日を、ココアちゃんと一緒に楽しみにしています。
